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通巻51号 平成21年5月15日発行 |
みなさんこんにちは。前回は「認知症」とはどのようなものかについてお話をしました。今回はその認知症にみられる「もの忘れ」についてお話しようと思います。
私たちは、ある程度年齢を重ねると、誰でも忘れっぽくなります。いわゆる加齢による「ど忘れ」というものです。
みなさんも、人や場所の名前がすぐに出てこなくて、もどかしい思いをしたことがあると思います。
実は、私も四〇歳を過ぎた頃から、人や場所の名前をすぐに出てこないことが増え、「あの人は何という名前だったかな」とか、「あそこの名称は何といったかな」などとよくぼやいています。
ただ、このような「ど忘れ」は、思い出したい情報が、完全に頭の中からなくなっているわけではありません。ですから、何かヒントを与えてもらうと、思い出せることがあります。 また、正しい答えを聞くと、「ああ、そうそう、○○さんだった」と思い出すことができます。
これに対して、認知症でみられるもの忘れは、「ど忘れ」とはちょっと性質が違います。
認知症の「記憶障害」は、もっと大事な事を忘れてしまいます。
例えば、昨日皆で遊びに出かけた事や、さっき一緒に食事をした事など、「自分が体験した」事を忘れてしまうのです。
普通「ど忘れ」では、自分が体験した事を忘れてしまうことはありません。
また認知症の「記憶障害」では、思い出したい情報が全く頭の中に残っていません。
ですから、ヒントを与えられても思い出せませんし、「さっき一緒にご飯は食べたじゃない」と家族から言われても、「そんな憶えはない、まだ食べていない」と本人は納得できません。
また「ど忘れ」と「記憶障害」とでは、自分でそのことを自覚しているか、いないか、という大きな違いがあります。
「ど忘れ」の場合、自分で忘れっぽいという自覚がありますので、一生懸命忘れないように努力をします。また、もの忘れを心配して、自分から病院を受診する人もいます。
これに対して、認知症の「記憶障害」では、あまり自覚がありません。特に「記憶障害」がひどくなるほど、余計に自覚はなくなります。
そのために、もの忘れをしないように注意することもせず、日常生活で様々な問題が生じます。
家族が、もの忘れを心配して病院へ連れて行っても、本人は「私はどこも悪くありません」と言い、時には「どうして病院なんかに連れて行くんだ」と家族を怒ったりします。
このように、生理的な加齢現象でみられる「ど忘れ」と、認知症という病気の症状としての「記憶障害」とは、同じ「もの忘れ」でも、その性質が全く異なるということをご承知下さい。
「ど忘れ」は時間が経ってもあまりひどくなりませんが、認知症の「記憶障害」は徐々に進行しますので、何らかの対策が必要になります。