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通巻66号 平成22年8月15日発行 |
7月(前半)と8月の2回に分けて闘病記を紹介しております。
入院してまもなくした頃、埼玉にいる弟夫婦と、大阪にいる私の長男夫婦がこぞって見舞いにやってきました。
ベッドに寝ていた私の枕元で弟が「体調はどげんの、顔色はよかばい」と、やさしく慰めの言葉をかけてくれました。
癌とはいえ、大してひどくも無いのだから、わざわざ遠方から来るほどのことでもないのにいったい誰が連絡したのだろうかなどと思いつつ、弟や息子たちには「私の病気はそうたいしたことではないから、心配無用。せっかく遠方から来たのだから、ついでに九州の名所でも訪ねるといい」などと、余裕のあるところをみせつけていたのでした。
元気そうな私の姿を見て弟夫婦は、安心したかのように笑顔をみせ、埼玉へ帰っていきました。
癌の告知を受けてから、癌のことは私の脳裏から片時も離れたことはありませんでした。
夜中に目を覚まし、言い知れぬ不安と恐怖に襲われ、眠れぬ夜も続きました。
死の恐怖におののきながらも、一方では又、癌などに負けてたまるかと自らを奮い立たせていました。
日頃から信仰心を持ってお参りしてきたわけでもなく、又心身を鍛えるような特別な修業を積んだことも無い私にとって、癌との闘病生活は、筆舌に尽くしがたいものがありました。
癌で亡くなった人の話を聞けば、その死が自分と重なってひどく落ち込んだり、あるいは何時までもくよくよと考え込んだりして、生きる気力すら失いかけるような状態が、ずっと続いたのでした。
耐え難い闘病生活を通して、私はあることに気づきました。
「人生は決して自分の思うようには行かないものであるから、人は誰でも少なからず、何らかの悩みや不安を抱えて生きている。そして、こうした悩みや不安に耐えていく中で、強い精神力が培われ、その結果たくましく生きていける力が備わるのだ」と。
今の私は、少なくとも以前と比べ、精神的にたくましくなったと思います。
そして、そればかりではなく、癌に対する考え方も大きく変わってきました。
癌を恐れ、癌と闘うことばかり考えてきた私は、むしろ癌と仲良くなって共に向き合って生きていく方が、苦しみも半減し、より楽しく生きていけるのではないかと、思うようになったのです。
闘病生活のお陰で、これまで見えなかったものが見えるようになったり、他人への思いやりなど、最近の生活はこれまで以上に感性豊かなものになってきたような気が致します。
平成21年3月31日に入院し、今日までの1年間は入退院の繰り返しでしたが、この間11回の抗がん剤の投与をしました。
今では、治療の甲斐あって体調も良く、気分も随分とよくなり、全て前向きに生きていこうという思いで、日々暮らしています。
癌の発生率が高い今日、癌は決して他人事ではない、ごく身近な自分や家族の問題です。
このように考えたとき、私の体験が少しでもお役に立てるならばと思い、この文をしたためた次第です。(了)